何だかんだ言っても、やはりみんな幸福な生活を望んでいるのではないでしょうか。そのために、日々生活し、活動し、出逢いなどなど行っています。日常の生活で感じた事、実際に経験したことなど、徒然のままに、記録してみます。
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2022年11月12日土曜日
アラスカのグレイシャー湾
アラスカのグレイシャー湾
アラスカ州南東部のアラスカ湾内、ジュノー市から数十キロメートルの太平洋岸に、グレイシャー湾国立公園があります。緯度の北緯五八・七度は、だいたい樺太の北端あたり。呼び名(グレイシャー氷河)のとおり、氷河ウォッチングができる観光地だそうです。氷河の面積が歴史上どんなふうに変わってきたのか、わかりやすい説明をアメリカ国立公園局がホームページに載せていました。★
Glacier Bay's Glacial History
一七五○~八○年ごろ、つまり小氷期のピーク時は、湾口までびっしり氷河が埋めていたとのこと(古記録によれば、小氷期がピークを迎える手前の一六六○年は、水辺に人が住む通常の湾)。小氷期が終わって地球が昇温モードに入った一八五○年ごろから(キリマンジャロの氷河と同じく)後退を始めていて、二〇世紀の中期になると、もはや湾内に氷河はありません。
つまりグレイシャー湾の場合、氷河の後退は、人間が出すCO2とはまったく関係のない時代にどんどん進んでいました。
世界各地の氷河あれこれも、気温の自然変動に従いつつ成長・後退を繰り返したようです。
たとえば古代ローマの全盛期は温暖だったと推定されています(ローマ温暖期。ウソ7)。紀元前二一八年には、現スペインのカルタヘナを出発したカルタゴのハンニバル軍が、象の「戦車」でアルプスを北から南へと越え、ローマの本土に侵攻しました。アルプスの氷河がいまの姿だったら、とてもそんなことはできません。
何度も書いたとおりCO2の大量排出は、第二次世界大戦後の一九五○年ごろ、ようやく始まりました。それとぴったり歩調を合わせてどこかの氷河が後退中‥‥という話は聞いたことがありません。
気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
2022年11月11日金曜日
NHKの「キリマンジャロ報道」
NHKの「キリマンジャロ報道」
二〇二二年三月一日にNHKは「おはよう日本」で、「キリマンジャロの氷河 温暖化で二〇四○年代に完全消滅のおそれ」と題し、三分近い放映をしました。ホームページに残る冒頭のナレーションはこう(太字は引用者)
地球温暖化の影響がアフリカで特に深刻化する中、アフリカ最高峰のキリマンジャロの頂上にある氷河が縮小していて、国連は、二〇四○年代には完全に消滅するおそれがあるとして、気候変動対策の強化を訴えています。
道直下のタンザニア、標高およそ五九〇〇メートルのキリマンジャロ山頂で氷河がどんどん減少中‥‥人間がCP2を排出するせいだ‥‥と視聴者に警告したかったのですね。でも、少し冷静になりましょう。まず、キリマンジャロの山頂は気温が氷点下一○~五℃なので、そう簡単に氷は融けません。
もっと大事なことがあります。放送開始から一分ほどの時点で、「世界気象機関」作の小さいグラフが、説明もなく画面の隅に挿入されました。横軸を一九○○~二〇二○年、縦軸を氷河の面積にしたグラフです。よく見ると、氷河の減少は一九○○年ごろに始まって、ほぼまっすぐに減り続けています。CO2の実質的な排出は一九五○年以降なので、原因を「CO2温暖化」とするのは、どうみても無理があるでしょう。
少し調べてみたところ、キリマンジャロ山頂の氷河は、もう一八○○年代の後半から、最近より激しい勢いで減り始めていました。★ 小氷期(ウソ7)から抜け出た地球が、現在まで続く昇温モードに入ったこと(要するに自然変動)と関係していそうな気がします。


また、二〇世紀の中期からはキリマンジャロ山麓で人口が増え始めました。それに注目したオレゴン州立大学のモート教授が二〇○六年に、わかりやすい説明を思いつきます。 住民が耕地をつくり、薪を得るには、木を伐るしかありません。樹木が減れば、土地の保水力が落ちて一帯の乾燥化が進みます。やがて山頂あたりでも空気の湿気が減る結果、氷が昇華しやすくなった‥‥それも氷河減少の大きな要因‥‥という説明でした。現地に出向いた研究者によれば、融け残っている氷の表面はギザギザだったとか(融解ならツルツルのはず)。そんなわけで現在、「CO2温暖化」説は旗色が悪くなっています。 キリマンジャロの「CO2温暖化」主犯説は、オハイオ州立大学のトンプソン教授が二〇○二年に発表しました。彼の論文に、氷河は二〇一五~二〇年ごろ消失すると書いてあります。以後しばらくその話題がメディアや関連本をにぎわせたものの、二〇二○年になっても氷河はまだ残っているからと、消失の予想時期を二〇~二五年先の二〇四○年代に先送りしたのが、本項冒頭のナレーションでしょう。 なおトンプソン教授がいまも「CO2温暖化」説を捨てていないのは、全米科学財団から受けとり続けた研究費と密接な関係がありそうです(ウソ9)。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)


また、二〇世紀の中期からはキリマンジャロ山麓で人口が増え始めました。それに注目したオレゴン州立大学のモート教授が二〇○六年に、わかりやすい説明を思いつきます。 住民が耕地をつくり、薪を得るには、木を伐るしかありません。樹木が減れば、土地の保水力が落ちて一帯の乾燥化が進みます。やがて山頂あたりでも空気の湿気が減る結果、氷が昇華しやすくなった‥‥それも氷河減少の大きな要因‥‥という説明でした。現地に出向いた研究者によれば、融け残っている氷の表面はギザギザだったとか(融解ならツルツルのはず)。そんなわけで現在、「CO2温暖化」説は旗色が悪くなっています。 キリマンジャロの「CO2温暖化」主犯説は、オハイオ州立大学のトンプソン教授が二〇○二年に発表しました。彼の論文に、氷河は二〇一五~二〇年ごろ消失すると書いてあります。以後しばらくその話題がメディアや関連本をにぎわせたものの、二〇二○年になっても氷河はまだ残っているからと、消失の予想時期を二〇~二五年先の二〇四○年代に先送りしたのが、本項冒頭のナレーションでしょう。 なおトンプソン教授がいまも「CO2温暖化」説を捨てていないのは、全米科学財団から受けとり続けた研究費と密接な関係がありそうです(ウソ9)。 気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
2022年11月10日木曜日
ウソ6 人間がCO2を出すせいで、各地の氷河が縮小ないし後退中
ウソ6
人間がCO2を出すせいで、各地の氷河が縮小ないし後退中
【事実】縮小・後退中の氷河もあるが、CO2の排出とは時期的に一致しない。
かのアル・ゴア(前章)は、映画『不都合な真実』にも、宣伝用のビデオあれこれにも、氷河の端が海ヘドーンと崩れ落ちる動画を組み込みました。NHKも、温暖化(気候変動)番組の冒頭で、海外から仕入れたものでしょうけれど、必ずそんな動画を使います(ウソ1)。ああいうものを、いったい誰がいつ使い始めたのか、不思議で仕方ありません。地球温暖化とはおよそ関係のないシーンですから。
南極大陸をご想像ください。南極海の水が蒸発して雲になり、大陸に雪を降らせます。沿岸部に設営された昭和基地さえ年平均気温が氷点下一○℃なので、内陸に降った雪のほとんどは消えず、氷になっていく。その氷は、どこまでもたまるわけにはいかないため、自重に押されてゆっくりと端部へ向かう。だから南極やグリーランドの氷は、「氷の河」と呼ぶのです。
南極大陸の場合、中心部から動き始めた氷が端部に達するまでの平均時間はおよそ五〇〇〇年、という見積もりを見たことがあります。
端部までやってきた氷は、崩れ落ちるしかありません。だから氷の崩落は、はるかな昔からいつも起きてきた自然現象なのですね。
ゴアもNHKも、「CO2が地球を暖めるせいで、氷河が崩落しやすくなった」と庶民に思わせたいのでしょう。そして視聴者の大半は、あれを見て「わぁひどい。温暖化対策をしなくちゃ」と思うのでしょうか。崩落の勢いは、過去数十年や一○○年でどう変わってきたのかそれをきちんと言えるほど、氷河の観測史は長くありません。今後も地道な観測を続け、もし崩落が激しくなっているとわかったら、ゴアの信者もNHKも「温暖化のせい」にしたいのでしょうが、そうは問屋がおろさない。崩落の勢いが強まるのは、氷が増えた場合に限るのですから。
つまりあの崩落シーンは、食糧の生産を脅かす「地球寒冷化」や「氷河期接近」を大騒ぎした五〇~四○年前(ウソ7)にこそ使うべきものだったわけです。
原因が何であれ、今後もし温暖化が進むとすれば、氷河はどうなるのでしょう? 端部あたりの気温が○℃を超え、氷がじわじわ融けていくことになります。そのときむしろ崩落は起きにくくなり、よほど近寄らないかぎり確認できないでしょうが、氷は表面が融けてツルツルのはず。小学生でも知っていますね。
ただし南極は、前章でご紹介したとおり、過去およそ七○年の観測史上ずっと気温が横ばいか下がりぎみだから、特殊な場所(活発な海底火山がある南極半島)を除き、氷河のゆっくりとした営みは、ほとんど変わらなかったと思えます。
気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
2022年11月9日水曜日
南極の氷
南極の氷
北極圏とはまったくちがい、南極圏に明確な昇温傾向はないようです(それも理由は不明)。
南極大陸の観測サイトで測った大気のCO2濃度は、世界各地の一二〇か所ほどで測られた値とほぼ同じなので(ホントの章)、少なくとも「CO2の増加を原因とみた地球温暖化」物語は成り立ちそうにありません。
GISSの気温サイト(ウソ2)を訪れると、南極大陸と周辺には五○か所ほどの気温観測点(各国の観測基地)が見つかります。その一部、昭和基地(日本)、モーソン基地(オーストラリア)、ケイシー基地(同)、エリザベス基地(ベルギー)、アムンゼン・スコット基地(アメリカ)などのグラフを見れば、観測開始(一九五○年代末)から気温はほぼ横ばいで、かすかな低下傾向があるようです(そんな場所だけ選んで紹介したわけではありません)。南極海の表層水温が横ばい~下がりぎみのせいでしょうが、北極海と同じく、「なぜそうなのか 」はまだきちんと説明できないようです。
南極大陸は、ほとんどの場所が年中氷点下なので、今後かりに気温が一~二℃くらい上がるとしても、氷が融ける恐れはありません。
なお二〇一五~一六年には、南極海の海氷が一時的に減りました。「すわ温暖化!」と騒いだメディアもありますが、さっき紹介したNSIDCの研究者によれば、何日も続いた猛烈な北風が海氷を大陸のほうへ吹き寄せ、見かけの海氷面積を減らしたようで、以後はまた「横ばい~微増」に復帰しています。
南極大陸と南極海の全体像はいま紹介したとおりですけれど、じつは大陸のごく一部に、特殊な場所があります。南アメリカ大陸の南端に近い、「南極半島」と呼ばれる場所。そこにあるエスペランサ基地(アルゼンチン)の気温グラフを の気温サイトで眺めれば、一九五○~二〇二〇年の七○年間に二℃くらい上がっていました。
それだけを見て「南極も猛烈に温暖化中」と書く学術論文やメディア記事が後を絶たないのですが(二〇二二年春の『ネイチャー』誌もそんな論文を掲載)、実のところ、南極半島の近海では海底火山が活動を続け、その熱が海水経由で空気に伝わるせいだといわれます。つまり「南極の温暖化」は、特殊なローカル現象なのですね。
要するに北極圏も南極圏も、「人間活動の出すCO2が温暖化をどんどん進めている」わけではありません。とりわけ北極圏の場合、近いうち表層水温が下降モードに転じたら海氷も増え始め、無意味な温暖化騒ぎも幕を引くか‥‥と想像(心から期待)しています。
「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
2022年11月8日火曜日
北極の氷
北極の氷
北極圏の氷は、南極大陸の氷とはちがい、海に浮かんだ「海氷」です。かつて海氷面積は船員の目視や航空機観測で推定したところ、一九七○年代の末からは人工衛星で観測できるようになりました。その結果を日々、アメリカの国立雪氷データセンターNSIDCがホームページに公開しています。★

National Snow and Ice Data Center 衛星観測によると一九七九~二〇二一年の四三年間、北極の海氷面積はほぼ直線的に減り続け、一○年あたりの減少率は約二・五%です。ちなみにゴアの映画『2』の予告版では、同じはずの数値が一三・三%(!)にもなっていました。いま進行中の海氷減少は、人間活動から出るCO2が増えた時期にたまたま一致するため、「人為的温暖化」のせいに見えがちですが、相関は因果関係ではありません(科学の基本)。ここ数十年は、北極海(と北大西洋)の表層水温が自然変動で上昇中だから、海氷も減っているようなのです。 海の表層水温がほぼ一定の周期で変動することは、二〇世紀の末ごろにわかりました(そのため、当時までの温暖化本には記載なし)。北大西洋の場合、周期は六○~八○年に見えるのでAMO(Atlantic Multidecadal Oscillation:大西洋数十年規模振動)と呼ばれ、過去一七○年間ほどの動向をまとめると、次のようになります(『狂騒曲』2章)。★

一八八○年ごろ~一九一○年ごろ 水温の下降期 一九一○年ごろ~一九五○年ごろ 水温の上昇期 一九五○年ごろ~一九八○年ごろ 水温の下降期 一九八○年ごろ~現在 水温の上昇期 つまり、(大気温も含む)衛星観測が始まった一九七九年はたまたま水温上昇のスタート時点に当たるため、そのせいで北極海の氷がじわじわ融けている―――と考えるほうが素直なわけですね。なお、海氷が融けても水位はほとんど変わらないので(アルキメデスの原理)、それが地球の海水面(ウソ6)を上げる心配はありません。 水温がゆっくり上下動すれば、それにつれて気温も上下動するでしょう。実際、グリーンランド各地の気温がどう変わってきたかをGISSの気温サイトで眺めれば、表層水温の動向とよく似ているのがわかります。★

「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)

National Snow and Ice Data Center 衛星観測によると一九七九~二〇二一年の四三年間、北極の海氷面積はほぼ直線的に減り続け、一○年あたりの減少率は約二・五%です。ちなみにゴアの映画『2』の予告版では、同じはずの数値が一三・三%(!)にもなっていました。いま進行中の海氷減少は、人間活動から出るCO2が増えた時期にたまたま一致するため、「人為的温暖化」のせいに見えがちですが、相関は因果関係ではありません(科学の基本)。ここ数十年は、北極海(と北大西洋)の表層水温が自然変動で上昇中だから、海氷も減っているようなのです。 海の表層水温がほぼ一定の周期で変動することは、二〇世紀の末ごろにわかりました(そのため、当時までの温暖化本には記載なし)。北大西洋の場合、周期は六○~八○年に見えるのでAMO(Atlantic Multidecadal Oscillation:大西洋数十年規模振動)と呼ばれ、過去一七○年間ほどの動向をまとめると、次のようになります(『狂騒曲』2章)。★


一八八○年ごろ~一九一○年ごろ 水温の下降期 一九一○年ごろ~一九五○年ごろ 水温の上昇期 一九五○年ごろ~一九八○年ごろ 水温の下降期 一九八○年ごろ~現在 水温の上昇期 つまり、(大気温も含む)衛星観測が始まった一九七九年はたまたま水温上昇のスタート時点に当たるため、そのせいで北極海の氷がじわじわ融けている―――と考えるほうが素直なわけですね。なお、海氷が融けても水位はほとんど変わらないので(アルキメデスの原理)、それが地球の海水面(ウソ6)を上げる心配はありません。 水温がゆっくり上下動すれば、それにつれて気温も上下動するでしょう。実際、グリーンランド各地の気温がどう変わってきたかをGISSの気温サイトで眺めれば、表層水温の動向とよく似ているのがわかります。★


「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
2022年11月7日月曜日
ウソ4 人間がCO2を出すせいで、北極と南極の氷が減ってきた
ウソ4
人間がCO2を出すせいで、北極と南極の氷が減ってきた
【事実】北極圏は、水温が自然変動の上昇期にあるため、海氷も減少傾向を示す。しかし南極圏の氷が減った気配はない。
温暖化の話を引っかき回したパワーの点で、アルバート(アル)・ゴアの右に出る人はいないでしょう。むしろ本書の後編にふさわしい話題も多いのですが、本章のテーマにもからむため、ここで彼の足跡を振り返っておきます。
ハーバード大学の政治学科を出て下院・上院議員になり、一九九三~二〇〇一年のクリントン政権で副大統領を務めた人。九七年の京都(COP3)に乗り込み、CO2削減率の約束(ホントの章、ウソ10)を○・五%程度にとどめたかった日本を「議長国がそれじゃあダメ」と叱りつけ、六%に上げさせました(日本がひとり負けした原因。ウソ10)。そのくせ当のアメリカは、途上国が削減義務を負わないからと、京都議定書を批准しなかったのです。
学生時代から環境に関心を寄せ、二〇〇六年の映画『不都合な真実』に出演し、同名の本(日本語版は枝廣淳子訳)も出した業績で、二〇〇七年のノーベル平和賞をIPCCと共同受賞(映画はアカデミー賞を受賞)。やがて炭素取引所の起業、太陽光発電や電気自動車業界への出資などで儲け、二億円弱だった個人資産を一〇〇億円近くに増やし、史上初の環境長者(ウィキペディア記事の表現)になっています。
国内に三つの豪邸を構え、テネシー州ナッシュビル市の家だけで庶民の二〇倍も電気を使いながら、他人にCO2削減を説く強者でした。
ここからが本章にからみます。ゴアの『不都合な真実』は、およそ科学とはいえない話が満載でした(『神話』5章)。ただしメディアが好むのは、理屈っぽい部分ではなく、庶民にわかりやすい部分だけ。その典型が「温暖化で北極圏の氷が減り、ホッキョクグマ(シロクマ)が苦しむ」という話です。猛獣なのに見た目がかわいい(?)ホッキョクグマは、子ども向けにもぴったりの素材でした。
たとえばNHKは、ノーベル平和賞とアカデミー賞を権威とみたか、二〇〇七年から翌年にかけ、プラネットアース第8集 極地・氷の世界』とか『NHKスペシャル 北極大変動 第1集 氷が消え悲劇が始まった』を放映したうえ、「みんなのうた」で『ホッキョクグマ』という歌(作詞・西村達郎)を流してもいます。歌詞の一部は左のとおり(傍点は引用者。なお「溶け」は、「融け」か「解け」のほうがよさそう)。
ホッキョクグマが減ってゆく
何かがおかしい地球の様子
氷がどんどん溶けはじめ
白い世界は小さくなった
(日本音楽著作権協会(出)許諾第二二〇四四六二-二〇一号)
あの歌で地球温暖化問題に興味をもったんですけどねぇ‥‥と、当時の妄信(洗脳)を残念がった若者を何人か知っています。テレビの「わかりやすい動画やメッセージ」は、それほどにインパクトが強いのですね。ゴアの映画『不都合な真実』でも(映画そのものは見ていませんが、ネットにあふれる抜粋版から判断)、たちまち融けて消え失せそうな流氷の上、北極海を漂う「哀れなホッキョクグマ君」のCG コンピュータ・グラフィックス)が、名場面のひとつでした。
でも心配はご無用。ホッキョクグマは泳ぎの達人だから、流氷がなくても生きていけます。
しかも、およそ二〇万年前にヒグマから分かれて以降、いまより気温がだいぶ高かった時代を何度も生き延びてきました。少なくともここ数十年、ホッキョクグマの暮らしを脅かしてきたのは、狩猟だけなのです
「みんなのうた」の放送期間は二〇○八年一二月~○九年一月だったところ、なかなか評判がよかったらしく、ネット検索すればYouTube版も見つかります。また、二〇二二年五月に発売されたCD二枚版『みんなのうた~昭和・平成の名曲ベスト』(キングレコード)では、なんと、収録された四八曲のひとつが『ホッキョクグマ』です。
いま北極圏の気温がじわじわ上昇中なのは事実でも(次項)、ホッキョクグマが「減ってゆく」というのは、事実ではありません(『狂騒曲』3章 )。ホッキョクグマ研究の第一人者、カナダ・ヴィクトリア大学の女性研究者スーザン・クロックフォード博士や、国際自然保護連合の調査によれば、一九四○~五○年代は狩猟のせいで数を大きく減らしたものの、狩猟が禁止されて以後の一九七○年代から二〇二〇年代にかけ、およそ五倍にも増えました。そのため、「害獣」ホッキョクグマの狩猟はまた解禁されています。
某出版社のベテラン編集者も、以上のようなことをお話ししたら、びっくり仰天のようでした。ゴアの映画や以後のメディア報道に、ひょっとすると中高校や大学時代の教員にも、すっかり洗脳されていたのでしょう。
約一○年後の二〇一七年、映画と原書のほか日本語版(枝廣淳子訳)も出た続編の『不都合な真実2』でゴアは、科学的な測定・観測データ類をあまり使わず、メディアが飛びつきそうなホラー写真をくり出しながら、実効のあやしい「行動」の訴えに終始しました。むろん、前作の「勇み足」に気づいたのでしょう、ホッキョクグマの話はありません。
もうひとつ、前作では大げさな仕掛けも使いつつ得意げに解説していた「CO2増加⇒気温上昇」の因果関係も、やがて「真実」(気温上昇 ⇒CO2増加)を学んだらしく、『2』ではまったく触れていません。それについてはウソ7の末尾で紹介しましょう。
「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
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