NHKの「キリマンジャロ報道」
二〇二二年三月一日にNHKは「おはよう日本」で、「キリマンジャロの氷河 温暖化で二〇四○年代に完全消滅のおそれ」と題し、三分近い放映をしました。ホームページに残る冒頭のナレーションはこう(太字は引用者)
地球温暖化の影響がアフリカで特に深刻化する中、アフリカ最高峰のキリマンジャロの頂上にある氷河が縮小していて、国連は、二〇四○年代には完全に消滅するおそれがあるとして、気候変動対策の強化を訴えています。
道直下のタンザニア、標高およそ五九〇〇メートルのキリマンジャロ山頂で氷河がどんどん減少中‥‥人間がCP2を排出するせいだ‥‥と視聴者に警告したかったのですね。でも、少し冷静になりましょう。まず、キリマンジャロの山頂は気温が氷点下一○~五℃なので、そう簡単に氷は融けません。
もっと大事なことがあります。放送開始から一分ほどの時点で、「世界気象機関」作の小さいグラフが、説明もなく画面の隅に挿入されました。横軸を一九○○~二〇二○年、縦軸を氷河の面積にしたグラフです。よく見ると、氷河の減少は一九○○年ごろに始まって、ほぼまっすぐに減り続けています。CO2の実質的な排出は一九五○年以降なので、原因を「CO2温暖化」とするのは、どうみても無理があるでしょう。
少し調べてみたところ、キリマンジャロ山頂の氷河は、もう一八○○年代の後半から、最近より激しい勢いで減り始めていました。★ 小氷期(ウソ7)から抜け出た地球が、現在まで続く昇温モードに入ったこと(要するに自然変動)と関係していそうな気がします。

また、二〇世紀の中期からはキリマンジャロ山麓で人口が増え始めました。それに注目したオレゴン州立大学のモート教授が二〇○六年に、わかりやすい説明を思いつきます。
住民が耕地をつくり、薪を得るには、木を伐るしかありません。樹木が減れば、土地の保水力が落ちて一帯の乾燥化が進みます。やがて山頂あたりでも空気の湿気が減る結果、氷が昇華しやすくなった‥‥それも氷河減少の大きな要因‥‥という説明でした。現地に出向いた研究者によれば、融け残っている氷の表面はギザギザだったとか(融解ならツルツルのはず)。そんなわけで現在、「CO2温暖化」説は旗色が悪くなっています。
キリマンジャロの「CO2温暖化」主犯説は、オハイオ州立大学のトンプソン教授が二〇○二年に発表しました。彼の論文に、氷河は二〇一五~二〇年ごろ消失すると書いてあります。以後しばらくその話題がメディアや関連本をにぎわせたものの、二〇二○年になっても氷河はまだ残っているからと、消失の予想時期を二〇~二五年先の二〇四○年代に先送りしたのが、本項冒頭のナレーションでしょう。
なおトンプソン教授がいまも「CO2温暖化」説を捨てていないのは、全米科学財団から受けとり続けた研究費と密接な関係がありそうです(ウソ9)。
気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
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