
最新かつ最強の(小学生だった私もぼんやり覚えている)伊勢湾台風が一九五九年だから、いま並べたレベルの台風は、もう六〇年以上も日本に来ていないのです。第二位の枕崎台風も三位の室戸台風も(以上三つが「昭和の三大台風」)、発生が戦後の高度成長期よりも前なので人間活動の出すCO2とはまず関係ありません。 ちなみに一九三四年の室戸台風が上陸した際の気圧(九一二ヘクトパスカル)は、日本の観測史上いちばん低い値でした(死者・行方不明者が九九名を数えた一九五九年の宮古島台風は上陸時の気圧がさらに低い九〇八ヘクトパスカルだったが、当時は米国領のため「日本の観測史」からは除くらしい)。 日本に来る台風の規模を気象庁が「統計史上○○番目」と表現する際は 、一九五一年以降の台風を指しています(そのため枕崎台風や室戸台風は「番外」にされがち)。その年から、いまと同じ基準で評価してきたそうです。なお気象庁によると二〇二一年は、「暴風雨を伴って上陸した台風がゼロ」の、たいへん珍しい年でした。 人的な被害の規模は、台風の進路にある気象前線の分布状況とか、社会インフラの良否や防災体制(次項)にも大きく左右されます。だから人的な被害の度合いと台風の「強さ」には、直接の関係はありません。ただし、調べた限りでここ三 ○年、つまり地球温暖化が世の話題になって以降、日本上陸時の気圧が三大台風より低かったものはないようです。 また、上陸や最接近をした台風だけ見ても、台風全体の強さがどう変わってきたのかは言えません。とはいえ、これも調べた範囲ですけれど、日本近海に発生した台風全部の強さを数値化したうえ、「狂暴化している」と結論づけた研究はないようです。 最近の二〇一三年に発生したハイエン台風(日本名:平成二五年台風三○号)は、八九五ヘクトパスカルもの低い気圧でフィリピン中部に上陸し、死者・行方不明八一二三名を出しました。その際もテレビでは識者が「異常気象」をもち出しましたが、変動の範囲内だと思えます。被害を大きくした要因の一部は、フィリピンの防災体制かもしれません。 気象庁がホームページに載せているグラフ類からも、七○年余の統計史上、台風の発生数や勢いが強まった気配はありません。むろん、データに表れないほどかすかな変化が進んでいる可能性は否定できませんが、この先いつか猛烈な台風が来て大きな被害が出たときも、専門家が吐く「異常気象」などという語は聞き流すのがよろしいでしょう。 「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)



