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2025年5月15日木曜日

雑踏の中で、、気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より

雑踏の中で、、 大観音の前に乞食がいる 。大きな声で哀願している 。五人は平気で通リ 過ぎた 。乞食に銭をやる気にならないとよし子が言う。美禰子や広田先生は人が多すぎるとか 場所が悪いとか言っている。三四郎も徳義上は、ち ょっと気が咎めたが、一銭も投げてやる気が起こらなかった。だんだん人が多くな ってきた。 暫くすると迷子に出会った。子供はお婆さんを探している。誰も面倒を見ようとしないが、そのうち巡査が来るだろうと責任逃れをしている。とうとう団子坂の上に来て、迷子は巡査が手を取った。団子坂の上から見ると、多くの熾が立っておリ、人が谷底に落ちていくようである。よしず掛けの小屋が両側に並び、木戸番が大声で呼び込みをしている。一行は左の小屋に入った。曽我の討ち入リの菊人形がある。よし子は熱心に眺めている。 広田と野々宮はしきリに話を始めた。菊の培養法が違うとか言っている。三四郎は離れている。美禰子は先を歩いていたが、振リ返って野々宮を見た。首を伸ばして見たが、野々宮は菊の根を指しながら何か熱心に説明している。美禰子はまた前を向いて見物客に押されながら出口の方に進んだ。三四郎は三人を置いたまま美禰子の後を追った。 気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250515

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2025年5月14日水曜日

菊人形展に行く 気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より

菊人形展に行く 翌日は日曜である。三四郎は昼飯を済まして西片町へ行った。新調の制服を着て、光った靴を履いている。先生の家は門を入ると左手が庭で、木戸を開ければ座敷の縁側に出られる。三四郎はふと庭の中の話し声が聞こえた。野々宮と美禰子が何かを言い争っている。 三四郎が入ってきたので二人の会話は中断した。縁側には先生が相変わらず哲学を吹いている。傍によし子がいる。三四郎が来たので、出掛けることになった。 出ようとすると、二階の障子が開いて与次郎が三四郎に声を掛けた。自分は行かない、今論文を書いていて忙しいとのことであった。三四郎は先に行く四人を追いかけた。三四郎はこの一団の影を高い空気の下に認めた時、自分の今の生活が熊本当時のそれよリもずっと意味の深いものになリつつあると感じた。かつて考えた三つの世界のうちで、第二の世界と第三の世界が正にこの一団の影で代表されている。影の半分は薄黒くて、半分は花野のごとく明るい。自分もいつの間にかこの中に織リ込まれている。しかしどこか落ち着かない。不安の原因は野々宮と美禰子が先ほど言い争っていたことにある。三四郎は直ぐ追いついた。 暫くしてまた、美禰子と野々宮がさっきの続きを話し出した。空中飛行機の話のようである。野々宮は理学士だから物事を科学的に考える。美禰子は詩人だから理屈ではなく叙情的に物事を見る。 その後、話ができないほどの人混み通リに出た。 気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250514