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2025年4月13日日曜日

野々宮君が大学構内を案内 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦

野々宮君が大学構内を案内

すると突然向こうて自分の名前を呼んだものがある。見ると野々宮君が石橋の向こうに長く立っている。「君まだいたんですか」と言う。三四郎は石橋の上まで来て「ええ」と答えた。 野々宮君は暫く池の水を眺めていたが、右のポケットに手を入れて何か探している。ポケットから半分はみ出した封筒が見えて、女の字が書いてある。しかし、探し物は見つからなかったのか、またぶらリと手を出した。 「今日は実験を止めにしてこれから本郷の方を散歩して帰ろうと思うが、君も歩きませんか」 三四郎は快く応じた。二人は丘の上へ出た。野々宮君はさっき女の立っていた辺リでちょっと留まって、赤い建物と、水の落ちた池を見渡して、 「ちょっといい景色でしょう。あの建物の角度の所たけが少し出ている」 三四郎は野々宮君の艦賞力に驚いた。 女(美禰子) が立っていた場所で野々宮君もいい最色だと言う。美禰子はこの景色を背娯に自分をモデルにした絵を描いてもらおうと思っていた。 野々宮君は 「それから、この木と水の感じがね。東京の真ん 中に あるんだから....。静かでし ょう。こう いう所でな いとだめですね。学問をやるには ....。僕は穴倉の生活をやっていれば済む のです。近頃の学問は非常な勢いで動いている ので、少し油断するとすぐ取リ残されてしまう。これでも 当人の頭の中は激烈に 働いているんですよ」 と言いな がら空を見た。空にはもう 日の光が乏しい。青い空の上皮に白い薄雲が筋交いに長く浮いている。 三四郎は仰いて半透明の雲を見た。野々宮君は、「あれは、みんな雪の粉です。下から見ると動いていな いが 、あれで地上の台風以上の速カで動いているんです。君ラスキン(注1)を読みましたか 」 三四郎は憮然として読まないと答えた。野々宮君はしばらくして、 「この空を写生したら面白いですね。原口にでも話してやろうかしら」と言った。三四郎は、原口という画家を知らなか った。

本郷三丁目の交差点にある洋品店「かねやす」 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250413

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2025年4月12日土曜日

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ポイント 池の傍で女ど出逢う 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦

ポイント 池の傍で女ど出逢う

ふと眼を上げると、左手の丘の上に女が二人立っている。女のすぐ下が池で、池の向こう側が高い崖の木立で、その後ろが派手な赤レンガのゴシック風の建築である。落ちかかった日が、すべての向こうから横に光を透してくる。女はこの夕日に向かって立っていた。三四郎のしゃがんでいる低い陰から見ると丘の上は大変明るい。女の一人はまぶしいと見えて‘団扇を額の所に蒻している。顔はよくわからない。けれども着物の色、帯の色は鮮やかにわかった。白い足袋の色も目に付いた。鼻緒の色はとにかく草履を履いていることもわかった。もう一人は真っ白である。団扇を持った女は少し前に出ている。この時、三四郎が受けた感じはただ綺麗な色彩だということであった。 三四郎は見とれていた。

女(美禰子)は、団扇で日を蒻しているが、少し前に出て、何かポーズをとっているようにも見える。 その時ふと「あら、下の方で池の辺の学生さんが、さっきから私の方をジッと眺めているわ」と心の中で呟いた。 若い女性はいつも人に見られているという自意識が強い。顔は素知らぬ振りをしても、他人の視線を絶えず意識している。 すると白い方が動き出した。用事のあるような動きでもなく、いつの間にか動いたという風であった。団扇を持った女もまた動いている。二人は申し合わせたような歩き方で坂を下リてくる。三四郎はやっぱリ見ていた。 坂の下に石橋がある。渡らなければ真っ直ぐに理科大学の方に出るが、渡れば水際を伝ってこっちへ来る。二人は石橋を渡った。団扇はもう蒻していない。左の手に白い小さな花を持って、それを嗅ぎながらくる。嗅ぎながら、辞の下に当てがった花を見ながら歩くので目は伏せている。女は、三四郎から一間ばかリの所へ来てひょいと留まった。「これは何でしょう」と言って仰向いた。頭の上には大きな椎の木が厚い葉を繁らせて水際まで張リ出していた。「これは椎」と看護婦がまるで子供に教えるように言った。「そう。実はなっていないの」と言いながら、女は仰向いた顔を元に戻すと、その拍子に三四郎を一目見た。 三四郎は確かに女の黒目の動く刹那を意識した。その時、色彩の感じは消えてなんとも言えぬ或るものに出逢った。その或るものとは汽車の女に「あなたは度胸のない方ですね」と言われた時の感じとどこか似通っている。三四郎は恐ろしくなった。 二人の女は三四郎の前を通リ過ぎて、若い方が今まで嗅いでいた白い花を三四郎の前へ落としていった。三四郎は二人の後ろ姿をじっと見つめていた。看護婦は先に行き、若い方が後から行く。華やかな色の中に白い薄を染め抜いた帯が見える。頭にも真っ白な薔薇を一っ挿している。その薔薇が椎の木陰の下の黒い髪の中で際立って光っていた。 この時、女(美禰子)は用もない振りをして、三四郎の傍まで下りてきたが、偶然(?)にも二人の視線が合い、その瞬間が目に焼きついてしまった。美禰子は詩人であり、鋭い感受性の持ち主である。一瞬自分でも理解できない不可思議な印象であった。美禰子は持っていた白い花を咄晩に落として通り過ぎた。美禰子は、三四郎との出逢いの光景を、後々まではっきりと覚えている。 ニ四郎は、やがて小さな声で「矛盾だ」と言った。大学の空気とあの女が矛盾なのか、 あの色彩とあの目つきが矛盾なのか、その他色々考えてみたがすべてわからなかった。ただ何だか矛盾であった。三四郎は女の落としていった花を拾った。そうして嗅いでみた。けれども別段の匂いもなかった。三四郎はこの花を池の中に投げ込んだ。 三四郎池(次頁地図C地点から西を望む)    47

[上図の説明] ①理科大学(左上)の野々宮君の実験室を出た三四郎は通りを左に曲がり森の方(E地点)にやって来た。夕陽は図の下面(西)から差している。 ②三四郎はE地点からC地点へ進み池の傍B地点に来てしゃがんだ。B地点の後ろに大きな椎の木がある。 ③三四郎がふと目を上げると池の向こうの丘の上(A地点)に女が二人立っている。 ④ やがて二人は用もなくC地点に下りてきて石橋を渡り、B地点の三四郎の前を通り、椎の木を眺める。「これは椎」と看護婦が言った時、女(美禰子)は三四郎と目が合う。女は思わず白い花を三四郎の前に落とした。 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250412