何だかんだ言っても、やはりみんな幸福な生活を望んでいるのではないでしょうか。そのために、日々生活し、活動し、出逢いなどなど行っています。日常の生活で感じた事、実際に経験したことなど、徒然のままに、記録してみます。
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2023年11月1日水曜日
2023年10月31日火曜日
「日本の二酸化炭素」は日本を汚さない
「日本の二酸化炭素」は日本を汚さない
わたしたちは、いつも「環境」、「環境」と言っていますが、いったいその「環境」とは何かを著者の研究室の議論を参考にして考えてみます。
学生は四年生になると、研究室に入ってきて研究を始めます。半分くらいの学生は大学を卒業してそのまま会社に就職しますが、大学院に進学する学生も増えてきました。大学の四年から大学院二年間を研究室で過ごすと三年間、研究することになりますが、それでも会社のように、何十年と同じところにいるわけではありません。
そこで環境を研究する学生も、毎年、新しく変わります。その学生が最初に聞いてくる質問はこうです。
「先生、二酸化炭素は環境に悪いのですか?」
著者が礫境問題を取り上げて研究し始めた頃、最初にこういう質問を受けたときには、「おっ、勉強したな」と思って、次のように説明しました。
「二酸化炭素は長波長の光を吸収するから、地球から宇宙に逃げる熱を遮る。だから地球が温暖化する。ただ、地球が温暖化したら環境に悪いかどうかは不明。海水面が上がるという説と変わらないという考えがある。たとえ、海水面があがってアメリカのニューオーリンズは沈むかもしれないが、地球が暖かくなればシベリアの森林が増えたり、雨が増えて砂漠が少なくなるという学説もある」
ところが学生のほうが一枚、上だったのです。
「いや、先生、計算ができないのです。日本で発生した二酸化炭素は上空の偏西風で太平洋に行ってしまいます。だから、二酸化炭素をいくら出しても環境負荷は変わらないのです。
日本で石油を燃やすと確かに二酸化炭素が出る。その二酸化炭素はすぐ偏西風にのって太平洋にでる。太平洋に出た二酸化炭素は空気より重たいので、徐々に海面近くに降りてきて海水に吸収される。ハワイにもアラスカにも到着しない」とその学生は言います。たしかに論理は正しいし、これまでの研究からも温帯地方の大洋では二酸化炭素の吸収が速いのです。学生はよく調べていますので、わたしの下手な質問にはぜんぜん動じません。せいぜい、偏西風がかなり上空であることを指摘する程度ですが、日本に風が吹いていることや周りが海であることは否定できません。
それでは、日本だけのことを考えずに、地球環境的にはどうか? と聞きますと、「もし、二酸化炭素が海水に吸収されなければ問題ですが、海水に溶けてしまうのですから地球探境にも問題ありません」ということになると、脱帽せざるを得ないのです。
実は、一口で「環境に良い」といっても何が環境に良いのか判らないことが多いのです。二酸化炭素は地球温暖化の原因になるから悪い、と単純に考えているときにはよいのですが、環境の研究をする場合には、それではあまりに雑です。
さらに、とりあえず、「二酸化炭素は環境に悪い」ということを仮定して、「製造のときにゴミを出さず、二酸化炭素を出さない商品が環境に良い」という基準で「環境に良い商品」をリストアップすると、今度は、輸入品ばかりが環境に優れた商品としてあがってきます。
考えてみると、輸入品が環境に良い商品になるのは当然です。国内で原料から作ると、作る工程でゴミも出ますし、二酸化炭素も発生します。ところが輸入品は外国で作るので、それを輸入する場合にはせいぜい港から販売店までの輸送だけが環境に影響を与えることになります。
ただ、輸入品を買うお金は、自動車や家電製品などの輸出品ですから、輸入する商品の環境負荷はすべて自動車と同じとするとこれも変な結論になります。
また、最近では日本に「鉱山」というものが無くなりましたが、もし鉱山が日本にあったら、鉱山から掘り出して作る製品は極端に環境の負荷が大きいので、日本の鉱山からの資源はできるだけ使わない方が環境に良いという結論になります。鉱山の鉱毒はできるだけ外国に押しつけた方が日本の環境には良いことになります。
このように、日本の環境を問題にすると行きづまるので、学生に「地球環境という視点から計算をしなさい」と課題を変えます。するとすぐ、質問が来ます。
「先生、地球環境を計算するときに、国ごとの基準を同じにするのですか、あるいは白人は汚して良いとか、黄色人種は汚れても良いとかするのですか?」
この質問をされるとお手上げです。
日本の環境を計算するとき、東京都に住む人は環境が汚れていてもかまわないとか、東京で売るものは環境に悪くてもよいなどと勝手に決めるわけにはいきません。
この問題が地球喋境では表面化するのです。地球に住む人が環境に関して等しい権利を持っているとすると、環境を汚しているのは先進国ですから、その生産量を落とせばよいという計算になります。日本は二酸化炭素の発生量を六パーセント減らすように政治的には圧力をかけられていますが、地球環境を考えると、二酸化炭素を八〇パーセント以上落とさなければ開発途上国と比較できなくなります。つまり、日本の環境だけなら、ある程度の科学的な合理性をもって計算できますが、「地球環境」となると政治的な判断が必要で、科学的には決めることができません。まして、「世界の人はみな、等しく環境を享受できる」と仮定して「良心的な環境派」を自認すると、直ちに日本の生活レベルを五分の一以下に落とさなければならなくなるからです。
そこで、また方針を変更して、「愛国的環境論で行こう。せめて日本の環境だけは守ろう」ということに戻ります。
著者と学生のこの一連の話で判ってもらったと思いますが、一言で「環境に良い」と言いますが、その内容がいかに難しいかを示しています。だから、滅多なことで「君は環境を汚しているじゃないか!」とか、「これは環境に悪い商品だから税金をかけるべきだ!」などと叱ることはできないわけです。
『日本社会を不幸にするエコロジー幻想』 武田邦彦著 (青春出版社 平成13(2001)年刊)
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2023年10月30日月曜日
「すべての化学物質は有害である。ヒトに有害であるか、無害・有益であるかは、その量による」
「すべての化学物質は有害である。ヒトに有害であるか、無害・有益であるかは、その量による」
このように洗剤の問題はすでに科学的にも社会運動としても、解決をしていますので、合成洗剤を使うか、せっけんを使うかは環境の問題ではなく、個人の好き嫌いや肌に合うか合わないかで選べるものとなりました。それでも、一つだけ注意をしなければならないことがあります。
それは最後に登場している生協の人の言葉です。
人間がすることには限界があります。毒性がない、環境に問題がないという結果が出ても、それが「真実」であるかは不明です。現境のこと以外でも、これまで学問は多くの間違いをしています。だから、学問的に「合成洗剤が無害で環境に良い」という結論がでてもそのまま信じることはできません。
同時に、「せっけんが無害で渫境に良い」という結論もそのまま信じられません。なぜなら、化学的物質の「質」と「量」は人間に対して同じような効果をもたらすからです。
せっけんと合成洗剤は化学構造が違います。その意味では「質」が違うので、片方が無毒で、片方が有毒ということがあります。
せっけんの場合は、昔も今も「質」は同じですが、「量」が桁違いに違います。「許容量」という用語があるように、どんなに毒性が高いものでも、ある限界以下なら生活には支障がありません。また、毒性が低いものでも、莫大な量になると、障害がでます。一時、食品や食品添加物を体重の何倍も与えると障害がでると騒がれたことがありますが、ほとんど無意味な話です。「安全」というのは「品がこれ以下なら」という限定条件が常についているからです。
もし、合成洗剤の使用を中止したら、せっけんの使用量は膨大になります。その量から計算すると環境の汚染はひどいでしょう。せっけんは水に溶けにくいので大量に使用すると、川や湖に沈殿して汚いものになる恐れがありますし、現実にもそのような例が見られるようになってきました。
多くのものが「少量では無毒、大量では有毒」なのです。すでに一六世紀の医者、パラケルススは、
「すべての化学物質は有害である。ヒトに有害であるか、無害・有益であるかは、その量による」
と言っています。もちろん、せっけんは化学物質です。
洗剤の問題を真剣に考えるなら、せめて一六世紀のレベルには達したいものです。
前向きに考えると、現在の日本の界面活性剤の使用量から、合成洗剤もせっけんも万全ではないが、みんなで使用量を減らし、環境への影響を監視しながら使っていこう。せっけんか合成洗剤のどちらかに問題が生じても、判断はみんなでしたのだから、それを非難しないようにしよう、常にデータを公表していこう、というのが前向きではないでしょうか。
人間の知恵には限界があります。それと同時に、わたしたちは生活のために、せっけんか洗剤を使っていかなければなりません。
唯一の解決策は「使わないこと」か、「少量にすること」ですが、生活のなかには汚れを落とさなければならないこともあります。また、体力が十分な人はごしごしと洗うこともできますが、病気の人はよく落ちる洗剤があると助かります。
合成洗剤が環境に悪いのか? というときに、人は「環境」というものを感覚的にとらえていることが多いようです。
最初はそれでもよいのですが、ある段階まで検討が進んだときには、より精密に考えなければなりません。
『日本社会を不幸にするエコロジー幻想』 武田邦彦著 (青春出版社 平成13(2001)年刊)
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【生配信】第310回 篠田英朗&居島一平&ナザレンコと中川コージ緊急参戦!最新ニュースを深掘り解説!
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