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2022年10月21日金曜日

衛星で観測した大気温

衛星で観測した大気温 以上の二つは地上の気温でした。じつは衛星を使う大気温の測定も一九七九年から続き、四三年四か月の歴史があります。いまデータの取得・解析と公開は、アラバマ大学ハンツビル(UAH)スペンサー教授が、NASA(元勤務先)と NOAAの協力を仰ぎつつ担当中。衛星は一日に地球を何周もしながら、おおよそ北緯八〇度~南緯八〇度の大気を「なめるように」観測します。 まずはグラフを一枚、頭に思い浮かべてください。左端をスタート時点(一九七九年一月)、右端を現在(二〇二二年四月)とした気温のグラフです。 最新のグラフにスペンサー教授は、四三年四か月分を直線とみた場合、底層の大気は「一〇年あたり〇・一三℃(三〇年なら約〇・四℃)の温度上昇」と付記しています。(★)ただしそれは、二種類の特別な自然現象にかなり影響されたあげくの値でした。

衛星からの地上温度変移

自然現象のひとつが、火山の大噴火です。グラフの左端に近い一九八二年三月にメキシコのエル・チチョン火山、一九九一年六月にはフィリピンのピナツボ火山が噴火して、成層圏に火山灰をを噴き上げました。それが太陽光をさえぎった結果、地球科学者の見積もりだと、以後の少くとも一~二年は気温を〇・三℃くらい下げたといわれます。もしも二度の大噴火がなかったとすれば、気温偏差のグラフは少し寝てくる(傾きが減る)わけですね。 ちなみに、つい最近の二〇二二年一月一五日に南太平洋のトンガで突発した海底火山の大噴火(NASAの推定で威力は広島原爆の数百倍)も大量の火山灰を吐いたので、これから地球の気温を少し下げるかもしれません。 もうひとつの自然現象は、グラフの右端に近い二〇一五~一六年の太平洋に発生した強烈なエルニーニョ(『狂騒曲』2章)です。そのエルニーニョは赤道付近の表層海水温を大きく上げ、海に接する空気を暖め、衛星観測の温度を〇・五℃も押し上げたため、かりに発生していなければ、気温グラフはやはり「寝る」ことになります。 そんなわけで、火山噴火とエルニーニョがなかったとすれば、一〇年あたりの上昇は「〇・一三℃」よりだいぶ小さいはず。私自身は目分量で「一〇年で〇・一℃未満 」と見積もりました。すると過去三〇年間の気温上昇も「〇・三℃未満」です。 温暖化や気候変動にからむテレビ番組を視たとき、新聞記事を読んだとき、あるいは関連書籍のタイトルをチラ見しただけでも、近ごろ地球の気温は五℃も七℃も上がったような気がしませんか? たとえば二〇二二年二月二二日付のニューヨークタイムズ紙が「静岡県に住むワサビ農家の苦難」を報じ、その中にこんな一節がありました。 以下引用 ‥‥気温の上昇により、浅田〔引用者注:農業者名〕の育てるワサビはカビに弱くなり、腐りやすくなった。予測できない降水や豪雨による洪水、威力を増す台風などが、浅田を悩ませている。‥‥静岡県には、浅田の他にも多くのワサビ農家がいる。彼らは皆、地球温暖化や放置された山林、そして若者の減少によって増え続ける課題と向き合わなければならない。 以上引用終わり おなじみのキーワードを散りばめたこういうホラー記事に、最近よく出合いますね。けれどそれはありえないのです。記事に登場する浅田氏のワサビ栽培歴はたまたま三〇年だそうですが、現実の気温上昇は十分に小さく、「過去三〇年でせいぜい〇・二℃」とみる研究者もいます。そんなものがワサビを痛めつけたはずはありません。 なお衛星データは、まだ半世紀足らずとはいえ地球全体の気温動向を語るベストな情報なのに、なぜか日本のメディアはほとんど取り上げません。 『「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)

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