◆ 「先祖」への感謝 ◆
日本人の精神の骨格には「自然を敬う」ということとともに、「先祖を敬う」というもう―つの大きな柱があります。合掌(がっしょう)するというのは、世の神々に手を合わせる、ということです。その神々は、山だったり、川だったり、オオカミだったり、稲穂だったり、とさまざまですが、これは多神教というものとは異なります。
宗教学という学問はヨーロッパの宗教を基(もと)にしています。何かにつけ一神教と多神教に分けたがるのはそのためです。
山の神様と言っても、単純に山だけを神様として信仰しているわけではないのです。
山を祭っているけれども、山だけではなく、山を含めた周辺の自然環境である山・海・川すべてが神様であって、単にそこに山があったから目の前の山の神様を祭っているだけです。このあたりはたいへん理解のしにくいところでしょう。
日本人の「先祖を敬う」の特徴的な部分は、「日本人の先祖は同じ」と考えていることです。
生物学的に考えれば、本来の系図は自分の父の代、祖父の代、曽祖父の代と人数が増えていくものです。自分の親は2 人、おじいさん•おばあさんは4 人、ひいじいさん・ひいばあさんは8人になります。遺伝子的に先祖をたどれば、その数はどんどん大きくなっていきます。
人間の1世代は大体30年ですから、100年経てば3代です。100年前の8人から遺伝子をもらって今自分がいるわけです。2の3乗で8人です。200年あるいは180年で6代ですから2の6乗で64人、先祖の数は64人となります。これが1000年になると、33代ですから、2の33乗で「8589934592」、私たちにはそれぞれ85億89934592人の祖先がいることになります。現在の世界人口より大きい数字です。
『かけがえのない国 誇り高き日本文明』武田邦彦著 MdN出版(R05年)より R080615

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