連載:至誠の覚醒 第二十七話 古本屋街を抜けて
高田馬場から歩いた。毎日、古本屋街を抜けていく道だった。
背表紙を眺めながら歩いた。立ち止まることもあった。買うこともあった。読まないままになった本もあった。それでも捨てられない。今も部屋のどこかにある。
教育学部の裏門から入ると、キャンパスの空気が変わった。都会の喧騒が、すっと遠くなる感じがした。広い空があった。木があった。学生たちが思い思いの時間を過ごしていた。
私はいつも、少し急いでいた。
塾があった。授業の準備があった。同期の学生たちが芝生でのんびりしているのを横目に、次の段取りを考えていた。キャンパスにいながら、キャンパスの外にいるような感覚だった。
クラブにも顔を出した。ヨット部の諏訪湖合宿にも行った。ESAのクラブハウスにも出入りした。スペイン語研究会の薄汚れた部室にも座った。どれも中途半端だったかもしれない。いつも片足しか踏み込めなかった。
それを後悔したことは、あまりない。
校門近くに食堂があった。三品食堂だったと思う。そこの牛丼が安くてうまかった。毎日のように食べた。今も名前を覚えているくらいだから、よほどうまかったのだと思う。腹が減っていた。いつも腹が減っていた。
早稲田の四年間を、私はどう過ごしたのか。
真面目な学生ではなかった。熱心なクラブ員でもなかった。しかし塾では本気だった。子どもたちの前では本気だった。それで十分だったと、今は思っている。
キャンパスで得たものより、あの教室で得たものの方が多かったかもしれない。
(つづく)R080405

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