連載:至誠の覚醒 第二十六話 千人の塾
私が入った頃、多磨塾は府中町に一か所だけだった。
こじんまりとしていた。生徒も少なかった。教師団も数人だった。それが、私の四年間で様変わりした。評判が評判を呼んだのだと思う。筒田先生は特別な宣伝をしていなかった。ただ、結果が出た。それだけだったと思う。
二年目に東府中教室が開いた。三年目に聖蹟桜ヶ丘教室ができた。そしてケヤキ並木通りに四階建てのビルを購入された。気がつけば四か所体制になっていた。
生徒数が千名を超えた。
千人の子どもたちが、多磨塾に通っていた。それは数字だが、数字ではなかった。一人一人に顔があり、名前があり、悩みがあった。深夜の二時まで残って勉強する子がいた。そのたびに院長は自ら車で送り届けた。一度も、面倒そうな顔をしなかった。
教師団も三十名を超えた。
夜飯は筒田先生の奥さんが差配してくださった。塾に来られるとき、私たちの好みをメモに取っていた。私はかつ丼か親子丼が多かった。ケヤキ並木のビルの隣にラーメン屋があって、そこで食べることもあった。いつも腹が減っていた。食べることが、一日の区切りだった。
塾が大きくなっても、筒田先生は変わらなかった。
経営者になったという顔をしなかった。教育者のままだった。それが不思議でもあり、当然のことのようでもあった。先生にとって、生徒数や教室の数は、目的ではなかったのだと思う。一人の子どもが、少しだけ強くなって帰っていく。それだけが目的だったのだと思う。
私はその四年間で、何かを学んだ。
授業の技術ではない。数学の解き方でもない。人が人を育てるとはどういうことか、その空気を、体で覚えた。言葉にできないものを、体に入れてもらった。
それは今も、私の中にある。
(つづく)R080404

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