全四回連載記事 第1回 忘れられた電気の実験室
忘れられた電気の実験室――1747年パリ、虫が近づかなかった植木鉢
1747年、パリ。ヨーロッパ中が「電気」という目に見えない力に熱狂していた時代のことだ。
フランス国王の専属物理学者として知られるジャン=アントワーヌ・ノレ(Abbé Nollet)は、一風変わった実験に取り組んでいた。ノレは当時、フランス随一の電気研究者であり、修道士200人以上を一列に並べライデン瓶の電気を一瞬で通り抜けさせるという壮大なデモンストレーションを国王の前で披露したこともある人物だ。そのノレが今回問うたのは、「電気は植物の成長に影響を与えるのか」という素朴な疑問だった。
実験はシンプルだった。同じ土、同じ種(マスタード)、同じ光、同じ温度。異なるのは一点だけ。一方の容器には電流を流し続け、もう一方は普通のまま放置する。3日後、電気を与えた種はすでに発芽していた。電気なしの種はまだ殻すら割れていなかった。
ノレはこの結果を1749年に論文として発表した。同時代の科学者たちはこの「電気が発芽を早める」という部分を高く評価した。だが、論文の中に付け足しのように書かれていたもう一つの観察――それはほとんど注目されることがなかった。
「電気を帯びた容器の周囲では、小さな虫が一定の距離で止まり、まるで見えない壁に触れたかのように引き返していく」
ノレは誇張しない人物として知られていた。見た事実だけを淡々と記録する科学者だった。その彼が「隔離された領域」と呼んだ空間がそこにあった。しかし当時の科学界は虫の話には関心を向けず、記録は静かに眠りについた。
それから94年後、舞台はスコットランドに移る。
1841年、エディンバラの発明家アレクサンダー・ベイン(Alexander Bain)は、電池に頼らず時計を動かすための安価な電力を探していた。彼がたどり着いたのは驚くほどシンプルなアイデアだった。銅と亜鉛の板を湿った地中に約1メートル間隔で埋め、地上でワイヤーでつなぐ。測定された電圧は約1ボルト。電池もいらない。発電機もいらない。湿った土そのものが電解質として働き、二種類の金属の間に電流を生み出したのだ。
これは電気化学の基本原理そのものだった。反応性の高い亜鉛が電子を放出し、銅がそれを受け取る。同時に、亜鉛と銅のイオンがゆっくりと周囲の土壌へにじみ出ていく。ベインはこの仕組みを「アース・バッテリー(Earth Battery)」と名付けた。彼の時計は数ヶ月にわたって動き続けた。
だが、ベインはある異変にも気づいていた。金属を埋めた周囲の土では、ミミズが活発に活動する一方で、特定の種のハエがその場所から姿を消していた。発明家だった彼はそれ以上深くは追わなかった。しかし、この観察が別の人物の目に留まることになる。
(第2回へつづく)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【無料】牧正人史式 姓名科学 解析システム(マシレ予測)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
#牧正人史 #マシレ予測 #電気の実験室 #コバエ忌避
0 件のコメント:
コメントを投稿