
天性の気取らない人懐こさで接する言動は、本人の悪意は微塵もないが、時に若い男をして自分に好意があるのではないかと勘違いをさせたり、惑わせたりする。 漱石はこれを「無意識の偽善家(アンコンシャス・ヒポクリット)」と言う。 里見家の両親は既におらず、長兄も早く亡くなって、里見家は次兄の恭助が相続している。この兄は現在独身で三十歳。東京帝国大学法科を出た法学士で、勤め人をしているが、そろそろ結婚を考える年齢である。美禰子は、兄が結婚すれば、里見家を出なければならない事情にある。日露戦争後の経済事情は大学出の勤め人でさえ生活に余裕はなかった。 また、年齢的にも既に峠を越えているので、早く結婚しなければというあせりとプレッシャーを感じている。 『気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より R0720250327
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