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2024年5月12日日曜日

「わからないことは、わからない」というのが本物の科学者

「わからないことは、わからない」というのが本物の科学者 「武田邦彦はウソや間違いばかりを言っている」との批判を受けることがあります。 しかし「ウソ」というのは、本当のことを知っているのにそれと違ったことを発言する場合のことです。 たとえば、2010年にNHKが朝のニュースで「石油はあと40年です」と言いました。1973年のオイルシ ョックのときにも、やはりNHKが「石油はあと30年です」と言っていました。こちらも間違いだったわけですが、たしかに当時(1973年)としてはそういう“錯覚”をする可能性はありました。しかし、2010年にはもう事態ははっきりとわかっていたのです。 2000年からシェールオイルの掘削が始まると、2009年にはそこから石油が生産されるようになり、それがあと1000年ぐらいは持つだろうということもわかっていました。 NHKの中には科学の専門家もいますし、石油に関する情報はいくらでも入っていたはずです。だから、2010年の時点で「石油はあと40年」というのは明らかに“ウソ”なのです。 このように、何が正しいかということがわかっていながら違ったことを言うことが「ウソ」です。そして、そこには何らかの意図があります。 私は一切「ウソ」をつきません。なぜならば、私は「科学者」だからです。科学者は「ウソをつくことに意味がない」と知っているからです。これについては、のちほど本文中で詳しくお話ししたいと思います。 とは言え、私も人間ですからどうしても「間違い」というものはあります。自分は本当だと思っていたけれどもそれが間違いだったときには、もちろん訂正して謝ります。ところが、「テレビや新聞と違ったことを言っているから武田は間違っている」という人がいるから困ってしまうのですが……。 私が間違いを言わないようにするために心掛けていることの一つに「必ずデータをみて、自分で考える」というものがあります。 たとえば、2020年のインフルエンザの患者数はものす ごく少なくて、平年の200 分の1です。これについて「みんながマスクをつけるようになったからだ」と言う人がいます。しかし、これは単に自分の先入観で説明しているに 過ぎません。今のテレビの評論家やコメンテーターの多くがこれです。 このときに私はどうしているかというと、まずすべてのデータを確認することから始めます。そして、2020 年のインフルエンザが平年に比べて少ない時期と、多くの人がマスクをするようになった時期、自粛していた時期などをすべて比較考察してみるのです。 すると、自粛もマスクもしていないときから2020年のインフルエンザはグンと減っていることがわかります。そうするとマ スク以外のなんらかの理由でインフルエンザが減ったのだということがわかります。このように、事実(データ)によって説明をするということが大切です。 当時 、「これから第3波が来るのか」ということについて、私は論評しませんでした。 なぜなら、新型コロナウイルスというものについて、私たちはまだ完璧に理解しているわけではないからです。 本来、科学者は「未来」に 属することについて、はっきりとした結論を言ってはいけません。政策担当者やビジネ スパーソンは、未来を予測してもいいでしょう。しかし、学術的な解説をする者は、そこに 確実性がなければならない。過去のことはきちんと説明しなければいけませんが、未来のことは「わからない」というのが正しい在り方なのです。 私が40 歳のころ、恩師から次のように厳しく指導されました。 「学問というのは 、ここがわかっていて、ここがわかっていないということをはっきり させないといけないものだ」――――。 学問は下手をすると、一般の方々に大きな誤解を与えてしまいます。そして、時に多くの人の命や財産を奪ってしまうこともあります。私の恩師は、学問の持つ危険性について教えてくれたのです。 今回の新型コロナウイルスに限らず、巷には科学の装いをしたフェイクニュースが蔓延しています。長年にわたってウソがまかり通ってきた結果、それが世間の常識として定着してしまったものもたくさんあります。 しかし、そうしたウソは多くの場合、誰かがそのウソによって「得をしよう」として流布されたものです。そして、一般の方々が健康面や金銭面で少なくない被害を受けています。 このような状況を打破するためには、一人ひとりが“ウソを見抜く力”を養う必要があります。本書では、みなさんがその力を養うために必要な「理系思考」に ついて科学者の立場から解説していきたいと思います。 武田邦彦 『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060512 P009

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