
……ひとりの人間が呼吸で出す二酸化炭素は年間約320kgであり、スギの木にして23本で吸収する。 ……自動車1台が出す排気ガスに含まれる二酸化炭素は年間約2300kgであり、スギの木が160本で吸収する。 ……1世帯の人が生活する時に出る二酸化炭素は年間約6500 kgであり、スギ460本で吸収できる。 このような具体的で簡単な話を示されると、相手は専門家だし、まさか林野庁という正式な国の組織だから間違いを言ったり嘘をついたりするはずがないと信じてしまうだろう。まして子供用だから嘘をつくはずはないと思う。 ところが、これが間違っている。 森林は、樹木が生まれて若い時には体が大きくなるので二酸化炭素を吸収して体をつくる。しかし、それは成長期のことで、樹木も成熟すればあまり大きくならないから二酸化炭素も吸収しなくなる。 そして、やがて老木になれば、段々と枯れてゆく。最後には木は枯れて倒れて微生物に分解され、空気中の酸素と結合して再び二酸化炭素になる。 従って、樹木の一生では、生まれてから成長期までは二酸化炭素を吸収して自分の体を大きくしているが、成熟すると二酸化炭素をほとんど吸収しなくなり、老齢になって死に至ると、今度は二酸化炭素を放出する。 ある一定の森林面積を対象にするなら、生まれる樹木も枯れてゆく樹木も最終的には同数で、トントンとなるから二酸化炭素を吸収しないことになる。 それでは、先程の林野庁の計算はなんだったのか。 実は「計算の前提」となる但し書きがついていて「50年生のスギの人工林には1ヘクタール当たり約170トンの炭素を貯蔵しており……」とある。この説明を読んで「ああ、これは樹木は死なないと仮定した時だな。樹木は生物なのに死なないという仮定は正しいのだろうか」などと思い付く人はほとんどいない。そこを狙っている。 筆者なら科学的な正しさを期すために「スギの木は炭素を貯蔵していますが、枯死した時にその炭素は二酸化炭素になります。材木として利用しても最後は同じ量の二酸化炭素になるので吸収はされません」と書く。正直に書いた方が気持ちは楽だ。 『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦 洋泉社刊 2007年 20230828 142
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