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2025年6月24日火曜日

三四郎の告白 気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より

三四郎の告白 二人でしばらく無言で歩いた。三四郎はなんとか話題の糸口を探している。やがて、女の方から口を利き出した。 「今日、何か原口さんに御用が御有リだったの」 「いいえ、用事はなかったです」 「じゃ、ただ遊びにいらしったの」 「いいえ、遊びに行ったんじゃあリません」 「じゃ、何でいらしったの」 三四郎はこの瞬間を捉えた。 「あなたに逢いに行ったんです」 三四郎はこれですべてを言ったつもリだが、女は少しも刺激を受けなかった。三四郎は、悪い予感がした。自分の精一杯の告白に美禰子は、ちっとも刺激を受けない。 「お金はあそこじゃ頂けないのよ」 三四郎はなお 「本当は、お金を返しに行ったのじゃあリません」 と言った。美禰子は暫くして 「お金は私も要リません。持っていらっしゃい」 と言った。それでも、三四郎は 「ただ、あなたに逢いたいから行ったのです」 と告白した。女の口から洩れた微かな溜め息が聞こえた。美禰子の口から洩れたのは微かな溜め息だった。三四郎の告白は遅かったのだ。今度は、女から話しかけた。 気楽に楽しむ漱石入門「三四郎」』武田邦彦 (文芸社刊 2016年)より  R0720250624

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